運転者の睡眠不足に起因する事故の防止対策について、「旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正概要」、「指導監督指針及び指導監督マニュアルの一部改正」が国土交通省のHPに公表されました。
既にご存知の方も多いかと思いますが、この6月1日から居眠り運転に起因する事故を防止し、働き方改革を進める観点から、運転者の睡眠時間の確保についてバス・タクシー・トラック事業者(以下「運送事業者」という)の意識を高めるため、睡眠不足に起因する事故の防止対策が強化されることとなりました。
この度の睡眠不足に起因する事故の防止対策については、主に、「旅客自動車運送事業運輸規則」及び「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の一部改正、「指導監督指針」及び「指導監督マニュアル」の一部改正の2つからなります。
そこで、先ずは、「旅客自動車運送事業運輸規則」及び「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の改正概要について解説したいと思います。
<改正概要>
①事業者が乗務員を乗務させてはならない事由等の追加
事業者が乗務員を乗務させてはならない事由等として、睡眠不足が追加されました。
②運転者の遵守事項の追加
運転者が遵守すべき事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができない等のおそれがあるときは、その旨を事業者に申し出ることが追加されました。
③点呼の確認事項の追加
事業者が乗務員の乗務前等に行う点呼において、報告を求め、確認を行う事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれの有無が追加されました。
④点呼の記録事項の追加
点呼時の記録事項として、睡眠不足の状況が追加されました。
⑤指導監督内容の追加
事業者が運転者に対して行う指導及び監督の内容として、睡眠不足が交通事故を引き起こすおそれがあることを理解させること及び理解させる一助として具体的な説明が追加されました。
睡眠不足は、疾病・疲労とは異なり、運転者の顔色、仕草、話し方等だけで判断することは難しく、運転者個々人によって必要な睡眠時間も異なってくるため、明らかな場合を除き、運転者の申告という主観的な判断に頼らざるを得えません。そのため、運転者が運送事業者に迷惑をかけてはいけないと遠慮して睡眠不足を申告しないという問題が今後の課題となってくるものと思われます。
また、運転者の睡眠不足を防止するために、運送事業者が運転者の休息時間の過ごし方についてどこまで突っ込んで指導するかという判断も難しく、労働基準法との兼ね合いも含め今後の課題となってくるものと思われます。
次に、「指導監督指針」及び「指導監督マニュアル」の一部改正の内容について解説したいと思います。
国土交通省では、この6月1日に「
①睡眠不足による重大事交通事故の発生
②事故発生時や積雪時等の緊急時の対応が不十分である事案の発生
③被害軽減ブレーキ等の運転支援装置を備えた車両の普及
また、同指針の具体的な実施事項等を示した「
そこで、「指導監督指針」及び「指導監督マニュアル」の一部改正の内容のうち「睡眠不足による重大事交通事故の発生」について詳しく説明したいと思います。
(睡眠不足対策に関する指導監督)
1.運転者に対する指導内容に睡眠不足を追加することについて
「
2.運転者に対する睡眠不足の具体的な指導内容について
睡眠不足が交通事故の要因となることについて運転者に対して適切な指導をするにあたり、具体的な指導内容としては、例えば、「良い睡眠をとることが事故防止に不可欠であること」、「就寝前の飲酒、喫煙、カフェイン摂取やPC・スマートフォンの使用は、睡眠の質を低下させること」、「運転中に眠気を感じた時は運転を中止し、休憩するか睡眠をとること」等について指導をしてください。
また、参考資料として厚生労働省が作成している『健康づくりのための睡眠指針2014』を活用するのが好ましいと思います。
なお、この指針では「睡眠時間が6時間未満の者では7時間の者と比べて居眠り運転の頻度が高い」などの具体的な研究結果をはじめ、質の高い睡眠に関する情報等が紹介されています。