令和4年10月に静岡県小山町で発生した貸切バスの横転事故では死者1名、重軽傷28名を出し、貸切バスの安全性について問われる大きな事故となりました。
国土交通省ではこの事故を機に、さらなる安全性向上に向けて旅客自動車運送事業運輸規則等の一部改正及び追加を行い、令和6年4月1日より下記の新制度が施行される運びとなりました。
(1)輸送の安全に係る書面及び記録の保存期間の延長等
一般貸切旅客自動車運送事業者(以下、貸切バス事業者という。)は、運送引受書、手数料等の額を記載した書類、点呼の記録、業務記録及び運行指示書について1年間の保存義務が3年間に延長され、点呼の記録は電磁的記録として保存することが義務付けられました。
(2)録音及び録画による点呼記録の保存の義務付け
貸切バス事業者は、点呼を行った際の状況を録音及び録画し、電磁的記録を90日間保存することが義務付けられました。
なお、電話点呼については録音のみが義務付けられました。
(3)アルコール検知器使用時の写真撮影の義務付け
貸切バス事業者がアルコール検知器を用いて運転者の酒気帯びの有無について確認を行う際に、点呼を行った際の状況を録画している場合を除き、当該呼気検査の実施状況の写真を撮影し、その電磁的記録を90日間保存することが義務付けられました。
(4)デジタル式運行記録計の使用の義務付け
貸切バス事業者は、その事業に使用する自動車の運行距離等をデジタル式運行記録計により行い、電磁的記録として3年間保存することが義務付けられました。
もっとも、令和6年3月31 日以前に新規登録を受けた事業用自動車に係る運行記録計による記録については、令和7年3月31 日までの間はアナログ式運行記録計による記録でも構わないこととなっています。
(5)安全取組の公表内容の拡充
貸切バス事業者にインターネット等で公表が義務付けられている安全取組の内容として、運転者に対して行う安全運転の実技指導が追加されました。
書面、記録などの保存期間の延長、点呼記録の保存・義務付け、安全運転の実技指導などと共に、特に注目すべきはアナログ式運行記録計からデジタル式運行記録計(デジタコ)の使用の義務付けがなされた点です。
貸切バスの安全性向上のためには、一般貸切旅客自動車運送事業者の新制度への理解と実行力が問われています。